婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 どうやら自分で思っていた以上に不器用だったようで、サーラは歪な形のパンを見て溜息をついた。
「ごめんなさい……」
「初めてなんだから、気にすることはないよ」
 キリネはそう言って笑った。
 大らかで優しい人だ。
 昔から完璧を求められてきたサーラにとって、ありのままの自分を受け止めてくれる彼女の優しさは救いだった。
 両親がいないにも関わらず、この孤児院にいる子どもたちが素直で明るいのも、きっと環境が良いからだ。
 その夜。
 サーラは空を見上げながら、自分の両親のことを思う。
 父はとても厳格な人で、娘のサーラにはとくに厳しかった。
 公爵令嬢として、他の令嬢よりも優れていることを求められ、それに必死に答えてきた。でもカーティスとの婚約破棄で、今までの努力はすべて無駄になり、父にも見放されてしまった。
 あの頃は父の期待に答えなければならないと思いこんでいて、それだけがサーラの世界のすべてだった。