婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 心からの感謝の言葉を、彼に向けて告げた。

 それからサーラは、ルーフェスとこの家に移り住み、雇ってくれたパン屋で働き始めた。
 パンを作るのは初めてではないが、働くは初めての経験だ。
 最初は、何度も失敗した。
 身重の店主を気遣って重い荷物を持とうとしたが、まったく持つことができずに、かえって邪魔になってしまったこともある。
 たくさんのパンのレシピを覚えなければならず、家に帰ってからも何度も練習した。そのせいで、ふたりの食事は何日もパンばかりになってしまったこともあった。
 大変だったけれど、楽しい日々だった。
 これからもずっと、こんな日が続くと信じていた。
 パン屋での仕事を終えて家に帰るサーラの前に、立ち塞がるようにして立っている人影に気が付くまでは。
 彼が目の前にいることが信じられなくて、サーラは呆然としたまま、その名を呼んだ。
「カーティス様。どうして……」
 そこには思い詰めたような顔をした、かつての婚約者。リナン王国の元王太子、カーティスが立っていた。