婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 年数は経っているがしっかりと手入れが行き届いていて、住んでいた人がこの家を大切にしていたのだとわかる。
「ふたりで住むには少し広すぎるけど、家賃もそんなに高くないし……」
 家主はお金に困っているわけではないので、新天地を目指してここまで来た人達の手助けになりたいと、格安で家を貸してくれるようだ。
 職場のパン屋にも近く、少し歩けば商店街もある。
「ルーフェス、ここに決めてもいいかしら?」
「ああ、もちろんだ」
 サーラの問いかけに彼は頷き、柔らかな笑みを浮かべた。
「契約者は君だからな。ここは君の家だ」
「……わたしの家」
 生まれ育った屋敷は、父のものだ。
 修道院も孤児院も、サーラの居場所にはなってくれたが、自分の家ではなかった。 
 ようやく自分だけの居場所を手に入れた喜びに、サーラの目に思わず涙が浮かぶ。
 長い旅路だった。
 それでも、辿り着いた場所でこんなにしあわせな気持ちになれるなんて思わなかった。
「……ありがとう、ルーフェス。何もかもあなたのお陰だわ」