婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 こじんまりとした店だが、たくさんのパンが並べられていた。中には、見たことのないパンもある。ここには、あらゆる国から移り住んできた人たちがいるからだろう。
 いくつかのパンを選んで会計に持っていくと、先ほどの店員の女性のお腹が大きいことに気が付いた。どうやら妊娠している女性らしい。
「大丈夫ですか?」
 仕事をしていても平気なのだろうか。
 心配になって思わず尋ねると、彼女はにこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。さすがにそろそろ、お手伝いをしてくれる人を雇いたいのですが、小さな店なのでなかなか人が見つからなくて」
 素敵な店だと思っていた。感じの良いひとだった。
 いつか、こんな店で働ければと思っていた。
「あの、わたしではだめですか?」
 思わずそう口にしていた。
「サーラ?」
 後ろにいたルーフェスが驚いたようにサーラの名を呼ぶ。
 自分でも、あまりにも突拍子のないことをしていると思う。
 初めて訪れた店で、急に雇ってほしいと頼み込むなんて、昔の自分では考えられない行為だ。