婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 この国は商人が多いようで、辻馬車よりも、御者付きの貸し切り馬車のほうが主流のようだ。荷物をたくさん積み込めるからだろう。
 ルーフェスも、ここで隣町までの馬車を借りた。
 目的地まで一気に走らせるのではなく、町ごとに馬車を借り直すようだ。
 手間も金銭もかかるが、用心のためだ。
 最初に雇われた御者は初老の優しそうな男性で、急がなくても良いというルーフェスの言葉通り、のんびりと馬車を走らせていた。
 その容貌に、何となく教会の雑用係だったウォルトを思い出す。
 雨の季節には腰が痛むと言っていた。
 彼は元気だろうか。
 ウォルトだけではない。
 孤児院の院長、子どもたち。そしてキリネは、今頃どうしているだろう。
(わたしが、こんなふうに誰かを懐かしむなんて。会いたいと思うなんて、想像もしていなかった……)
 海が好きだと思ったこと。
 もう一度会いたいと願う人が、できたこと。
 普通の人間にとっては、当たり前のことかもしれない。