婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 しばらく躊躇ったあと、サーラはようやく口を開いた。
「女性?」
 サーラが声をかけられたと知って、ルースが警戒を強めている。でも彼女の目的は、自分ではなかったのだ。
「はい。彼女はわたしに言いました。一緒にいた人は、ルーフェスという名前ではないでしょうか、と」

 沈黙は、ほんのわずかな時間だったのかもしれない。
 でもサーラには、とてつもなく長い時間のように感じた。緊張感に耐えきれずに思わず息を吐くと、止まっていた時間が動き出したかのようにルースが顔を上げる。
 彼はサーラを見つめると、少し寂しげな笑みを浮かべた。
「もう一度、その名を聞くとは思わなかったな」
 ひとりごとのような小さな声だった。
 その口調はどこまでも静かで、悲しみや動揺などは微塵も宿っていないようにみえる。
 でもあまりにも静かな様子は、かえってサーラを不安にさせた。
「ルース……」
 思わずその名を呼ぶと、彼は視線を窓の外に向ける。