婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

「行こうか」
「うん」
 落ち込みそうになる気持ちを振り払って、サーラは差し出されたルースの手を握る
 たとえ身代わりでも、誰かに愛された記憶は、きっとこれからの人生の希望になってくれるだろう。
 高級な宿屋だけあって、食堂も大きく立派なものだ。それでも、今夜はサーラたちと同じように外出を控える人が多かったようで、かなり混み合っていた。しばらく待って、ようやく席に案内してもらう。
「何にする?」
「ええと」
 メニューを開いて、真剣に考える。食べたいものを選ぶのは、なかなか難しい。でもルースは、急かす素振りさえ見せずに待ってくれるので、安心して選ぶことができる。
 いくら高級な宿でも、貴族の食卓のように何品も出てくることはない。それでも並ぶまで時間が掛かりすぎて冷めてしまった料理よりも、温かいまま気軽に食べられる料理のほうが、ずっとおいしかった。
「このパン、とっても柔らかいわ」
 ふんわりとしたパンに感動していると、ルースが何かを思い出したように笑う。