婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

「船が着いたみたいで、町はすごく混み合っていたわ。食べに行くのも買いに行くのも大変そうだから、今日は宿の中にある食堂に行きましょう」
 彼が来る前から考えていたことを告げると、ルースは頷いた。
「ああ、そうするか」
 外套を脱いでいたので、彼もそう考えていたのだろう。
 でもサーラが外に行くことを選んだとしても、ルースはそれを否定しない。すべて、サーラの思い通りにさせてくれる。
 父も母も、サーラを愛してくれたことはなかった。だから、一般的な愛がどんなものなのかわからない。そんなサーラでさえ、ルースは自分に甘すぎるのではないかと思ってしまう。
「どうした?」
 視線を感じたのか、ルースが振り返った。
 穏やかな優しい声に、思わず頬が緩む。
 人に優しくされるのは、こんなにも嬉しいことなのだ。
「ううん。早く行きましょう」
 でも、わかっている。
 サーラは心の中で小さく呟く。
 ルースの愛が向けられている先は、亡くなってしまったという、彼の妹だ。自分はその身代わりにすぎない。