婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 すべて、あの孤児院での経験のお陰だ。
 できないなら、頑張ればいい。
 どうしようもないほど不安なことなら、いったん忘れてしまえばいい。
 優しくそう教えてくれたキリネを思い出して、少しだけ感傷的になる。国に帰らないということは、彼女たちにも二度と会えないということだ。
 優しい院長に、かわいい子どもたち。
 アリスは無理をしていないだろうか。あんなに慕ってくれていたのに、戻るという約束を果たせなくなってしまった。
 そう考えると、また泣いてしまいそうになる。
「どうした?」
「……孤児院のみんなのことを、思い出して。あんなに親切にしてもらったのは、初めてだったから」
「そうか」
 頷くルースの声は優しかった。
「落ち着いたら、手紙を書くといい。詳しいことは話せなくても、無事だとわかれば喜ぶだろう」
「はい」
 サーラは頷く。
 たとえ離れてしまっても、大切な人たちだ。彼女たちに受けた恩は、けっして忘れることはないだろう。

 船旅は、思っていたよりもずっと順調だった。