婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 赤くなった頬に手を当て、逃げるように視線を反らしたサーラの耳に、ルースの優しい声が聞こえる。
「泣けるようになったのは、良いことだ。耐えることしかできなかった状態から、脱した証拠だ」
 まるでサーラの心を理解していたような言葉だったが、彼の言う通りだった。
 今までは泣くことさえできなかったのに、言葉にして語ったことで、心の整理ができたのは間違いない。
「はい。ようやく、泣けました」
 そう言って素直に頷く。
 するとルースの手が、まるで妹を褒める兄のように、サーラの頭を撫でる。それからはっと我に返り、切なそうに謝罪するのは、以前とまったく同じだった。
 サーラと妹を重ね合わせてしまい、亡くした痛みを思い出してしまったのだ。
(大切な、妹だったのね)
 知ることのない、ルースの過去。
 彼の妹は、どんな理由で亡くなってしまったのだろう。
 聞いてはいけないことだ。触れてもいけない。
 それを理解していたサーラは、ルースが落ち着きを取り戻すまで、ただ静かに待った。