婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

「つらい思いをしたな」
 そのひとことで、必死に堪えていた涙が溢れてきた。
 あの頃は家族も友人も、誰ひとりとしてサーラに優しい言葉をかけてなどくれなかった。自分が悪いのだと言われ、ひとりで耐えるしかなかったのだ。
 本当につらくて、苦しかった。
 その気持ちが、彼の優しいひとことで浄化していく。
「……」
 無言で涙を流すサーラを、ルースは傍で静かに見守ってくれていた。


◆ ◆ ◆


 リナン王国のエドリーナ公爵といえば、王家に継ぐ力を持っている有力貴族である。さらにその現当主であるトリスタン・エドリーナは、リナン王国の国王にもっとも信頼されている重臣でもあった。
 そんな彼だから、リナン国王が王太子についてずっと悩んでいたことは知っていた。
 リナン国王には王子がふたり、王女がひとりいる。
 王太子であったカーティスは王妃が生んだ嫡男であり、次男と長女は、王の側妃との子どもであった。