婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 彼もまた、裕福な商人に見えるような恰好をしている。だが服装を整えると洗練された雰囲気が際立ち、どう見ても貴族にしか見えないくらいだ。最初にその姿を見たときは、思わず見惚れてしまったことを思い出して、ますます頬が赤くなる。
「サーラ?」
「いえ、何でもありません。少し緊張していただけです」
 慌ててそう言うと、ルースはふと笑みを浮かべた。
 これから夫婦を装うのだから、言葉使いを変えたほうがいいと言われて頷く。
「はい、わかりまし……。わかったわ」
 慌てて直すが、やっぱり不自然かもしれない。
 ずっと両親、もしくは王太子であるカーティスとしか接していなかったので、敬語が身についてしまっている。それでも、この段階でサーラにできることは、なるべく怪しまれないように自然に振る舞うことだけだ。
(頑張ろう。わ、若夫婦に見えるように……)
 恥ずかしいなどと言っている場合ではないと、自分に言い聞かせる。顔は見えないようにしっかりと外套を着こんで、ルースとともに宿を出た。