「おはよう!」

 秋葉が登校してから少し遅れて、私も教室に入る。

 だけど、私がわざと登校時間をずらしたのに、ドアを開けるなり秋葉がニコニコと話しかけてくる。

「おーっす。花帆、遅かったな!」

 その言葉に、教室の空気が凍りつく。

 そりゃそうだよね。秋葉って、普段自分から女子に話しかけたりなんてしない。

 しかもその相手が私みたいな目立たない女子。

「聞いた? 『花帆』だって」
「なんか仲良さげ……」
「あの子、何なの?」

 うう、女子たちの視線が痛い!

「お、おはよう、秋葉くん……」

 私は笑顔を引きつらせながら答えた。

 秋葉は馴れ馴れしい態度で私の頭に肘を置く。

「んー、何なのお前、冷たいじゃん」

「そ、そうかな? ははは……」

 ちょっと、教室では馴れ馴れしくしないでよね!

「っていうか、置くのやめてよ」

「しょうがねーじゃん、起きやすい位置にあるんだからよー」

「やめて」

 私が拒否したにも関わらず、頭を何度もポンポンしてくる秋葉。

「はははっ、花帆は小さいなあ」

「だからやめてって」

 何だかやだなあ。

 秋葉くんのファンの標的にされたらどうしよう。