近くに住んでいるのに、この公園にお花見に来たのは初めて。
今までは、一緒に行く恋人もいなかったから。
そもそも人混みで騒いだりするのは好きじゃなかったしね。
でも今日は、一人で歩いて屋台を見ているだけなのにこんなに楽しい。
どうしてだろう。
一年前、秋葉に出会う前の私と、今の私じゃ全然違う自分みたい。
ずっとチビで子供っぽいのがコンプレックスだったけど、今はこんな自分でも好きでいられる。
背筋を伸ばして、前を見て、自分らしい自分でいられる。
そんな自分を、私はちょっぴりだけど好きになり始めていた。
「お昼、買ってきたよーっ」
屋台で買ってきた焼きそばを秋葉に見せる。
「おお、焼きそば。いいね」
「家でも食べれるんだけど、屋台で買う焼きそばってやっぱり違うよね」
「分かる」
二人で笑い合う。
「あ」
――と、秋葉の手が急に私の方へと伸びてくる。近づく二人の距離。
「……ほへ!?」
私がドギマギしていると、秋葉は私の髪の毛をそっと撫でた。
「桜の花びら、ついてたよ」
見ると、秋葉の手にはピンク色をした桜の花びらが。
「……ありがと」
あー、びっくりした。
心臓が大きな音を立てる。
もう、秋葉ったら!
私が恥ずかしくて横を向いていると、秋葉くんが笑いかけてくる。
「春だな」
春のように暖かで優しい笑顔。
「……うん」
私も秋葉の瞳を見つめてらゆっくりと微笑み返す。
うららかな風に包まれて、今、私たちの桜色の春は始まったのでした。
[完]



