「さてと、もうすぐお昼だな」
秋葉が腕時計にチラリと目をやる。
現在の時刻は午前十一時すぎ。混むのは十二時を過ぎたあたりからかな。
「今はお客さんもあんまりいないし、花帆、先にお昼に入っていいぜ」
「ううん、私はそんなにお腹空いてないし、秋葉お先にどうぞ」
「マジ? じゃあ行ってくるわ」
秋葉がエプロンを脱ぎ、増え始めた人混みの中に消えた。
「よしっ!」
私はエプロンの帯を締め、気合いを入れ直した。
「お団子ー! お花見団子はいかがですかー!」
私の声に、三人組の年配の女性がお団子の前で足を止めた。
「わぁ、美味しそう」
「本当に。ちょうどお団子が食べたいと思ってたのよ」
「三本入りを一ついただくわ」
「ありがとうございます!」
頭を下げると、女性の一人がニコニコしながら言った。
「あら、感じのいいお嬢さんね。明るいし、笑顔で、挨拶もきちんとしてるし」
「い、いえ、そんな!」
「本当に。若いのに偉いわぁ。今日はお父さんのお手伝いかしら?」
「えっ」
もしかしてこの奥様たち、私を小学生か中学生と間違えてる!?
「あの、えっと、一応高校生でアルバイトなんですけど……」
「あ、あら、そうなの」
「若く見えるから。ごめんなさいね。オホホ……」
少し気まずそうにして女の人たちは去っていく。私はため息をついた。
まぁでも、笑顔と挨拶を褒められたことはプラスに考えなくちゃ。
ただでさえ秋葉の隣に立つには美人さも大人っぽさも足りないんだ。
愛想ぐらいは良くしなきゃいけないし。



