「……あ、そうだ。私も」

 私は、カバンから箱を取りだした。

「これ、クッキー。チョコはいらないっていってたけど、クッキーならいいかなって思って」

「ありがと、開けてもいい?」

「うん」

 秋葉が箱を開ける。

「お、チョコチップクッキーか」

「あ、うん」

 そう、実は昨日作ったチョコ、くだいてクッキー記事の中に入れたんだ。

「俺、チョコチップクッキー好きなんだ。食ってみていい?」

「うん、どうぞ」

 秋葉がクッキーにかぶりつく。
 すると――。

「なんか、でかいチョコの塊があるな」

「本当?」

 秋葉に言われ、クッキーをひょいとのぞき込む。

「ほら、ここ、何か文字が見える……『キ』と『ス』って」

 秋葉の言葉に、顔がボッと熱くなる。

「あ、それは――」

「……これって、キスしてほしいってこと?」

 そう言うなり、秋葉の顔が近づいてきて、私は無理矢理キスされてしまった。

 違う! それは『スキ』なのに!

 ……でもまあ、いっか。

 バレンタインのキスは、甘いチョコレートの味がした。

 キスが終わると、秋葉はペロリと舌を出して唇を舐めた。

「……花帆、こんな風にキスをせがんでくるなんて、意外といやらしいのな」

「ち、ちがーう!」

 そういう意味じゃない!

 ……と、そんなこんなで、私たちのバレンタインは、とっても甘くなったのでした。