「でも大吉って、本当に良い事しか書いてないんだな。願い事も叶うって書いてあったし。スゲーなあ」

 秋葉の吐いた白い息が、薄青い空に溶けていく。

「叶えばいいな」

 私はさっき神様にお祈りしたことを、心の中でもう一度繰り返した。

 あのお店で、秋葉とずっとずっと一緒に働けますように。

「さ、行くか。足元凍ってるから気をつけろよな」

 秋葉がゆっくりた振り返り、手を差し出す。

 その笑顔を見て、私の心はふわふわとした甘いもので満たされた。

 初めて毒舌王子のお店で働くってなった時は、こうなるとは全く思ってなかったな。

 運命って不思議。

「……うん、行こっか」

 どうかこの願いが叶いますようにと、おみくじに祈り、私はその手の温もりと共に石段を降りたのでした。