「ケーキのスポンジ、焼けたよ」

 オーブンから丸く焼けたスポンジケーキを取り出すと、生クリームを泡立てていた秋葉が腕まくりをした。

「よし、じゃあ飾り付けをしていくか」

 さすが和菓子屋の息子だけあって、秋葉はセンス良く生クリームやフルーツを飾り付けていく。

「花帆もやるか?」

 とイチゴのパックを渡されたけど、秋葉の飾り付けがあまりに見事なので、私は丁重にお断りした。

「ううん、秋葉がやったほうがキレイだし」

「そうか? じゃあ全部やっちまうか」

 秋葉は、ケーキを回して色んな角度からフルーツを飾った。

 それだけじゃない。栗に、あんこに、白玉まで。

「それって」

 私が目を丸くしていると、秋葉は少し悪戯っぽく笑った。

「バレか。ちょっとクリームあんみつ風のケーキにしようかと思ってな。実はスポンジにも黒蜜を練り込んである」

「そうだったんだ。いつの間に!」

 ケーキにあんみつなんて、と初めは思った。

 けど、出来上がったケーキを見ると、フルーツやあんこ、白玉が宝石みたいに輝いてる。

 うわあ、おいしそう!
 まるでお店で売ってるケーキみたい。

 秋葉がケーキの盛り付けをしている間に、私はサラダやチキンの準備を始めた。

「できた」

 二人でサラダやミートボール、グラタンを盛り付けてシャンパンに似せた炭酸ジュースを開ける。

 シュワシュワと泡のはじける黄金色のシャンパンを見つめていると、何だか気分が上がってきた。