ビターなアイツと甘い関係 ~毒舌王子と同居して、ナイショの甘いバイトはじめました~


「――というわけなんだけど

 仕事が終わり、私は秋葉にメモを渡した。

 秋葉はメモの中身を確認すると、あからさまに溜息をつきながらメモをゴミ箱に捨てた。

「ああっ」

 私が慌てると、秋葉は少し怪訝そうな顔をしてこちらを見た。

「なに?」

「どど、どうして捨てるの⁉︎ 連絡してあげないの?」

「連絡してどうすんだよ。実咲とは確かに中学の頃付き合ってたけど、もう終わったし」

 ああ、やっぱり実咲さんは元カノだったんだ。

 私はお店に来た実咲さんの、百合の花みたいな凛とした美しさを思い出した。

 あの人だったら、いくらでも他の素敵な男性と付き合えるだろうに、やっぱり秋葉がいいのだろうか。

 だってわざわざ店まで足を運んで連絡先を教えてくれたんだから。

 秋葉はふぅと小さく息を吐いてスマホを手に取った。

「俺さ、去年、スマホを川に落として水没しちゃったんだよね。それで連絡先とかも全部消えて」

「そうだったんだ」

「でも実咲の連絡先が消えても特に不自由することもなかったし、今更特に話すこともないから、実咲の連絡先は必要ねーよ」

「そう――なんだ」

 なんだか胸がちくちくした。

 偶然小さい雑誌の記事で秋葉の記事を見つけて、一人でここまで。

 実咲さんはどういう気持ちでお店に来たんだろう。

 実咲さんは言ってみれば恋のライバル。

 だけど――それを考えるだけでなんだか泣きそうになってしまった。

 私には実咲さんの気持ちが痛いほど分かる。

 だって私も、秋葉のことが好きなんだもん。

 それなのに、秋葉は何で女の子にこんなに冷たいんだろう?