「全く、まだ怒ってんのか?」
その日の放課後、商品並べながら、秋葉はケロリとした顔で言った。
「――別に怒ってない」
私はぷいっと横を向きながら答えた。
別に、怒っているわけじゃない。
むしろ、好きな人にキスされて嬉しいはず……なんだけど、何だかモヤモヤする。
「大丈夫だって、あんなの大したことないし、忘れろよ、犬に噛まれたと思ってさ、なっ」
秋葉くんの軽い口調に唖然とする。
そりゃ、経験豊富な秋葉にしてみれば大した事じゃないのかもしれない。
だけど私は……初めてのキスだったのに!
私はしゅんと下を向いた。
そっか。
その時、私は自分の胸の中のモヤモヤの正体に気づいた。
秋葉とキスをして、動揺しているのは私だけ。
秋葉はちっとも気にしてない。
犬に噛まれたようなものだと思ってる。
それってきっと、私の事なんて何とも思ってないってことなんだよね。
それが――私は悲しいんだ。


