剣崎の家は凄い豪邸で、坊ちゃん育ちだと納得した。

「玲子、来たことあるんだろ?」

「ないよ、いつも外で会ってるんだから」

「そうか」

「私と剣崎くんはこのまま、付き合っても未来はないし、お互いに友達止まりの付き合いって思ってるから」

「じゃあ、僕はどう?」

「えっ?」

「僕なら玲子と結婚して都築総合病院継げるよ」

「もう、冗談言わないで、さ、行こう」

玲子はいつもこの調子で、僕との未来の話ははぐらかされてしまう。

剣崎の家のインターホンを鳴らすも、「坊っちゃまはお休み中なので、お引き取りください」と門前ばらいを受けた。

「スマホに連絡してみるか」

しかし、連絡はつかなかった。

それから程なくして、剣崎は入院した。

病院なら会えるかと思ったが、考えが甘かった。

まさか、面会出来ない程重症とは思いも寄らなかった。

玲子はすっかり気落ちして笑顔が消えた。