「この部屋の資料すごく役に立つんですもん。こんな新聞記事とかよく集めましたね」

「暇潰しに犯人を推理していたので。ペンで色々と書き込んであるでしょう?」



 確かに、どこを探せば証拠が出てくるであろうとか、ずばり犯人の名前だとか、色々書きこまれている。

 さすがは趣味で探偵をしていた男である。やはり謎を解かずにはいられない質なのだ。

 シエラは、色々な期待を込めて、こんな質問をした。



「黒瀬さん、この世界ではどんな事件を解決してきたんですか?」

「はい?」

「だって、あの黒瀬さんの記憶を持ちながら探偵をやってないなんてあるはずないですよね?どうせ今も、本業は商会長で副業が探偵とかなんでしょう?」



 虚を突かれた顔をした彼は、やがて緩く首を振った。



「……やってませんよ。探偵なんて」

「そうなんですか?じゃあ、前世の話を聞かせてください。私が死んだ後、どんな事件を解決しましたか?」