わかりづらい場所でも、繰り返し来ればさすがに迷わず来られるようになった。

 シエラがその屋敷のベルを鳴らせば、庭から掃除中と思しき老人が顔を出す。



「ごきげんようジョシュアさん。連日お邪魔してすみません」



 クレイトン商会の本部兼ルシウスたちの住む屋敷。

 ルシウスを脅すような手紙を送った犯人であったことが先日判明したジョシュアだが、ルシウスの意思で無事和解した。それでも彼は反省の意を示すため、この屋敷で下働きのようなこともし始めたそうだ。



「ようこそおいでくださいました。ルシウスさんは商談中でしばらくかかりそうですが……」

「いつものように適当に待たせてもらうのでお構いなく」

「わかりました」



 お礼を言ったシエラは、屋敷の中を迷いなく歩く。そして裏口近くの階段を下り、持っていた鍵でその先の扉を開けた。

 地下にあるこの部屋には、ルシウスが集めたという様々な資料がそろっている。シエラはその中から顧客名簿を取り出し、ある貴族の名前を探した。