「……そうですね。少しばかり嫌な話をしてしまったでしょうか。すみません」
ルシウスは軽く目を伏せ、深く息を吐き出した。
それから、重苦しくなった雰囲気を変えるように立ち上がり、何かをポケットから取り出した。
「君にこれを渡しておきます」
「これは……鍵?」
「ええ。この部屋の合鍵ですよ」
「合鍵?何で私に?」
首を傾げるシエラに、ルシウスは少し得意そうに壁一面の書棚を順々に手で示した。
「こちらには過去15年分の新聞記事のうち、目ぼしい事件をスクラップしたファイルが、そこには商会の顧客名簿の写しと簡単な調査書が。探偵として調べものをするのに便利な資料がこの部屋には大量にあります」
「……もしかして、この資料を自由に見させてくれるってことですか?」
ルシウスは静かにうなずいた。そして、どことなく照れくささを隠すような笑みを口元に浮かべた。
「まあ、せっかくですから……時々顔を見せに来てください」



