「物語の中のヒロインが謎を解くときの言い回しや仕草、犯人の追い詰め方に至るまで、前世の俺にそっくりだと思っていたんですよねぇ」
「ううぅ……」
「そして普段の行動パターンは静奈くんそのものです。こんなの、静奈くんの記憶を持った人物がこの世界にいて、黒瀬蒼也のものまねでもしているのではないか……と疑いたくもなるでしょう」
もうやめてほしい。羞恥心でどうにかなりそうだ。
探偵らしい振る舞いを意識するとき、毎度必ず黒瀬の姿が頭をよぎる。それもそのはず、シエラの中で「探偵=黒瀬」だったのだから。確かにほぼものまねみたいなものだ。
「ほら、第2巻の57ページにあるこのセリフなんて、前世の俺が言った言葉と一言一句同じではありませんか。君は俺のことをずいぶんしっかり観察していたんですねぇ」
「もう……言わないで……」
「とはいえ、そんな創作物だけで確証が得られたわけではありません。実際に会うまでは半信半疑でした。まあ、君のことを一目見たらすぐに確信に変わりましたけどね。先ほどの暗号は最終確認です」
「日本語を知らなければ絶対に解けない暗号、ですね。だけどあんなの、前世の記憶があったって解けるかどうかわからないじゃないですか」



