ルシウスは、シエラの抱く疑問を察したらしく、壁一面に広がる書棚から一冊の本を取り出した。
その表紙を見た瞬間、額に変な汗が流れる。それは、シエラの部屋に何冊もある小説だった。
「これってもしや……」
「主人公は貴族令嬢でありながら裏では探偵として大活躍するというストーリーの人気小説。どうやら君がモデルらしい」
「ままま待ってください!これは!」
シエラはかあっと頬が熱くなるのを感じた。
シエラが探偵としていくつか事件を解決したとき、その噂を聞きつけた作家がシエラをモデルにした小説を書き始めた。新作が出るたびにその作家から小説が届くため、シエラも全巻読んでいる。
話自体は面白く、人気があるのもわかるのだが……何しろそのヒロイン、実際のシエラよりずいぶん美化されているのだ。主に容姿が。だから、依頼人などから「小説読みました!」なんて言われると複雑な気分になる。
だが、今回シエラが穴に埋まりたいほど恥ずかしくなったのは、少し違う理由だった。



