「『暗号は解けたようだね、おめでとう静奈くん』」
頭上から降ってきたのは穏やかな声だった。今まで聞いた中で一番穏やかな声で、ルシウスが──暗号の答えと同じ言葉を口にした。
「……え?」
「本当はその暗号、見知らぬ男に渡されたものではなく、先ほど俺が即席で作ったものですよ。……この意味がわかりますね?」
恐る恐る目を開いて彼を見ると、つい今までの怪しげな笑みはすっかり鳴りを潜め、声と同じような穏やかな色が浮かんでいた。
初めてルシウスに会ったとき、妙に目が離せなかった。しばらく話すうちに、昔どこかで会ったかのような感覚を覚えた。推理を話しても全く反応を示さなかった。そして何より──今、シエラのことを“静奈くん”と呼んだ。
頭の中で、パズルのピースがパチンと音を立ててはまった気がした。
「黒瀬、さん……?黒瀬さんなんですか?」
「改めまして、俺の名はルシウス・クレイトン。今は少しばかり大きな商会で代表を務めていますが、前世では趣味で探偵をしていました。……久しぶりですねぇ、静奈くん」



