元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 ガチャリと施錠する音がした。

 ルシウスが、今まで見たことがないほど怪しげな笑みを浮かべ、一つしかない扉の鍵を内側から閉めたのだ。



「え……」

「シエラ嬢。貴女はもう少し人を疑うことを学んだ方が良い」

「ルシウス、さん?」



 数日前に知り合ったばかりの男と二人きりで密室の中。助けを求めて叫んでも、まず声が届かないであろう地下。彼だけが持っている鍵。

 ようやく、自分が何やらまずい状況にあることに気が付いた。



「な、何のつもりですか」



 大して広くもない部屋の中で、ルシウスは一歩一歩ゆっくりと、シエラに近付いてくる。シエラは後ずさりしつつ彼を睨みつけた。

 しかし、あれよあれよという間に壁際まで追い詰められた。


 ルシウスの大きな手が、逃げ場のないシエラに向かってゆっくりと伸びた。

 怖い。

 反射的にキュッと目を瞑る。


 ……彼の手は、そんなシエラの頭にポンと置かれた。そしてそのまま、ゆっくり慈しむかのように撫でた。