元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。





「地下室へは向こうの階段から行けます。ご案内しましょう」



 ルシウスは何も聞かずに歩き出した。

 せっかく暗号が解けた様子なのに内容を尋ねることもせず、突然興奮した様子で地下室へ連れていけと言ったシエラにあっさり従う。

 そんなルシウスの行動に対する違和感に気付けないほど、シエラは動揺していた。


 屋敷の裏口の手前に、直接地下へ続く階段があった。

 その階段を静かに下っていくルシウスにシエラも続く。


 地下へ下りると、古びたドアが一つあった。ルシウスはそのドアを開いて振り返る。



「どうぞ」



 シエラは恐る恐るその部屋に足を踏み入れる。そして部屋の隅々まで見渡した。



「黒瀬さん?いるんですか?」



 返事はない。やはり、彼が──黒瀬がこの世界にいるなんてこと、あるはずがないのか。


 少し冷静になったシエラはふうっと息を吐く。あの暗号は、偶然日本語で解けてしまったに過ぎないのだろうか。



「取り乱してすみませんルシウスさ──」



 何も聞かずここまで連れてきてくれたルシウスに謝罪の言葉を言おうとした時だった。