「あの人が悪いのよ!何度もしつこく求婚してくるから仕方なく結婚してあげたのに、子どもができないとわかればあっさり興味を失って!その上よりによってこんな下賤の女に手を出すなんて!この女が妊娠していると知ったときには肝が冷えたわ。あの人、子どもが生まれれば絶対に次期当主にすると言い出すもの。だから殺してやったの。今ならあの人が死ねば当主はわたくし。この女も追い払えて全部解決。そのはずだったのに……!」
わっと声を上げて泣き出した夫人。
亡き侯爵の気持ちが夫人から離れていったことは他の人の目にも明らかだったらしく、周囲は何となく夫人に同情するような空気になる。
しかしシエラは、厳しい表情で彼女に言った。
「確かに侯爵は最低な人間だったのかもしれません。だけどね、あなたは人を殺した時点で、そんな侯爵よりもっともっと最低な人間に成り下がったんですよ。きちんと罪を償いなさい」
「……」
がくりと項垂れる夫人。
その後夫人は、外で待機していた衛兵に連れられて部屋を出て行った。



