シエラは最初にルシウスを見たとき、見たことのないほど美形の男だと思った。しかし今冷静に考えてみると、彼ぐらいの顔立ちの男は、ダグラス家と交流のある貴族の子息たちの中にも割といる。

 もっとこう、彼の根本的な何かに、シエラを惹きつけ畏怖の念すら抱かせるものがある……気がする。



「シエラ嬢?俺の顔に何か付いていますか?」



 ルシウスの戸惑い混じりの声に、シエラは長いこと無言で彼の顔を見つめていたことに気が付いた。



「ご、ごめんなさい」

「シエラお姉さん、ルシウスさんがかっこいいから見惚れてたでしょー?でも僕、シエラお姉さんがルシウスさんばっかり見て僕のこと見てくれないの寂しいな」



 依頼について話している間はずっと静かにしていたレオンが、突然シエラの腕にぎゅっとしがみついてきた。



「え、あの……ごめんね」

「レオン。妙なこと言って困らせないでください」



 大して困ってなさそうな声で言うルシウスに、レオンは子どもらしい明るい声で「ごめんなさーい」と笑った。