夫人の顔には、とうとう諦めの色が浮かんだ。
それでもシエラは続けていく。
手芸を趣味としている夫人は、二年前この屋敷で働き始めたメイドの彼女に、記念として手作りのハンカチを贈った。
ハンカチは毎日使う物であるため、何枚かは破れたり汚れたりでやむなく処分し、正確な枚数は持ち主のメイドもわかっていなかった。
そこで夫人は今回、二年前に贈ったものと同じハンカチをもう一度作って被害者のそばに置くことで、彼女に罪を擦り付けられると考えたのだ。いくら主人とはいえ、他人の部屋に入り物を盗むのは難しいため、『他人がメイドを犯人に仕立てるため、わざとハンカチを置いた』という可能性は皆の中で除外されていた。
そこまで語ったシエラはふうっと息をつき、まっすぐ侯爵夫人を見た。
「以上が私の推理です。いかがですか?」
夫人は床に膝をつき、両手で顔を覆った。
弱々しくむせび泣きながらも、彼女は恨みのこもった声で言った。



