シエラはそう言って、どこからか若草色のハンカチを取り出した。被害者のそばに落ちていたものだ。

 それを見た夫人の顔色が一段と悪くなる。



「こちらのメイドさん、同じデザインのハンカチをいくつも持っていたそうです。これはどこで手に入れた物ですか?」

「二年ほど前、奥様から頂いた物です。まとめて10枚ほどプレゼントされました」

「なるほど。綺麗なハンカチですね。縁どっているレースの形状も独特で。形は正方形より少し歪ですが……職人ではない誰かが手作りしたような味がありますね。ところで──」



 シエラは部屋の隅で気配を消しているダグラス家の使用人女性に目を向ける。彼女は小さくうなずくと、シエラの前に進み出て何かを差し出した。

 シエラはそれを受け取ると、皆に見えるようバッと広げた。



「これは先ほど、夫人の部屋で見つけた布です。ハンカチと同じ若草色をしていますね。もしやご自分で染めたのでしょうか。色味にムラがありますが、それがまたいい味を出していますね。そしてこの色ムラで濃くなっている部分の境目が……おや、こちらのハンカチとぴったり合いました」