ルシウスはそう言って探るようにシエラの目を覗き込んだ。



「……俺がそんなこと言っても、フラれるのが嫌で丸め込もうとしているようにしか聞こえませんか?」

「いえ。……いえ、ルシウスさんの言う通りかもしれないです。何だかすごく──納得しました」



 もやもやとしたものが晴れた感じがする。

 深く考えずに、直感を信じてしてしまう。確かに、それで良いのかもしれない。



「あの、ルシウスさん。いつもの『シエラ嬢』って呼び方やめてもらってもいいですか?何かちょっと距離を感じてしまって」

「おや、そうですか。では『シエラくん』と呼びましょうか?」

「あはは、そういえば『静奈くん』って呼び方は、探偵助手っぽいからって理由でそう呼ぶようお願いしたんでしたね。でも今の私は探偵であって助手ではないので、普通に呼び捨てでいいですよ」

「そうですか。では──シエラ」



 シエラ。

 彼の声を頭の中で反芻させる。