ルシウスは冷ややかな表情のままナイフを当て続けていた。それでも、侯爵が抵抗する気力を無くしたあたりでゆっくりと離した。
「ここにちゃんと意識のあるシエラ嬢がいて運が良かったですねぇ。俺は彼女の見ている前で殺人者に成り下がるつもりはないので」
怒りでいっぱいだったルシウスの表情に、少しだけいつもの冷静さが戻っていた。
──やがて、部屋の外から複数人の足音が聞こえてきた。
「おーい、どこにいる?ルシウス・クレイトン!」
「ここですよ皆さん。ラドクリフ侯爵も一緒です」
ルシウスが答えた直後、部屋の中にシエラが連れて来た衛兵たちがぞろぞろと入ってきた。
彼らはルシウスに代わってラドクリフ侯爵を拘束し、それからベッドの上に横たわるシエラに気付いてぎょっとした。
「ご、ご無事ですかダグラスさん!」
ようやく薬の効き目が切れてきたのか、身体が少しずつ動かせるようになってきた。
シエラはうなずきながら、ルシウスに掛けてもらったローブの下で、乱された服をゆっくり整えていく。



