元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 夕日を浴びていつもより赤っぽく輝く髪と、爛々と光を宿した青い瞳。

 いつも感情をあまり表に出さず飄々としているルシウス・クレイトンが、見たこともないぐらい怒りを露わにしていた。



「俺が本気で人を殺したいと思ったことは二度あります。一度目は前世で静奈くんを死に至らしめた酒田圭司に対して。二度目は──今、お前に対して」



 ルシウスは、先ほどの縄と同様に隠し持っていたらしいナイフを取り出し、その刃先をラドクリフ侯爵の首筋に当てた。

 侯爵は本能的に命の危機を感じたのか、恐怖で大きく顔を歪めた。



「なっ、やめろ!……おい!誰か!助けろ!!」

「無駄ですよ。言ったでしょう、衛兵たちが全員目を覚ましたと。正確に言えば、俺が目を覚まさせ、全員の拘束も解いたんです。今頃、優秀な彼らはこの屋敷の者たちを一人残らず拘束しているはずです。気絶させられたことがよっぽど屈辱だったのか、やる気に満ち溢れている様子でしたし」

「くっ……!」