元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 その声だけで人を殺せるのではないかと思うような恐ろしい声色だったが、ローブの男は怯むわけでもなく淡々と報告した。



「薬で眠らせていた衛兵たちが、一斉に目を覚ましました」

「……は?そんなわけがないだろう。あの薬はそんなに弱いものではない」

「しかし、確かに全員目を覚ましていまして。拘束はまだは解けていませんが」

「はあ……。お前はものを考えたことがないのか?力づくで拘束を解かれる前に、もう一度薬を嗅がせるなり殴るなりして気絶させておけば良い。見てわかるだろう。こっちは忙しいんだよ」



 そう言って再びシエラに向き直ったラドクリフ侯爵は、その手で自らのズボンのベルトをガチャガチャと緩め始めた。



「ほら、さっさと出ていってくれるかな」



 侯爵はまたしても殺意すら感じる声でそう言う。

 しかし、……ローブの男は、それに従わず何故かこちらに近づいてきた。



「俺はものを考えたことのない馬鹿な使用人なのでわからないのですよ。人を気絶させる殴り方というのは、こんな感じでしょうか」