元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 胸元のボタンは一つ一つ外され、スカートの中には生温かな手が侵入してくる。

 シエラの嫌がる反応を楽しむかのように素足を撫でまわされる。


 身体が動かないのがもどかしくて仕方ない。手を払いのけることも、蹴りを入れることもできない。

 次第にシエラの頭に「諦め」の文字がちらつき始めた。



「助……けて」



 誰にも聞こえない、誰も助けてなんてくれない。そうわかっていても呟かずにはいられなかった。


 ──スカートの中の、下着にまで手を掛けられそうになったその時だった。



「大変です、ご主人様!」



 部屋の扉が、ドンドンドンと激しく叩かれ、勢いよく開いた。

 ラドクリフ侯爵はシエラに触れていた手を離し、苛立ちながら扉の方を見た。シエラも視線だけそちらに向けると、黒いローブを着てフードを目深にかぶった男が一人立っていた。

 確か侯爵の言う「事件の偽装や荒事に特化した使用人」の一人だ。



「ちっ、使用人の分際でわたしの邪魔をするか。何だ。よっぽどの緊急事態なんだろうね」