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　シエラ・ダグラスの一日は、侍女に身だしなみを整えてもらいながら手紙を読むところから始まる。

　シエラの元には毎日何通もの手紙が届くが、そのほとんどは『令嬢探偵』への依頼だ。髪を丁寧に結い上げてもらう間にその内容を確認して、受ける依頼を決める。


　届く依頼の手紙は多くて、とても全てを受けることはできない。

　だからそういう時は、手紙からも伝わってくるほど切迫している人や、自分が役に立てそうな人のものを選ぶようにしている。依頼人が貴族であるか庶民であるかということは関係ない。あとは物理的に距離が遠すぎる場所からの依頼は申し訳ないが断るようにしている。


　シエラは、自分が決して有能ではないとわかっている。前世で探偵助手をしていたにすぎない自分が、探偵として今までどうにかやってこられたのは奇跡みたいなものだ。



「お嬢様、何か受けられそうな依頼はありましたか？」



　シエラの髪をきちっと結い上げた侍女が、目を輝かせながら聞いてきた。