五人。シエラが連れて来た衛兵の人数はそれで全員だ。


 すっと血の気が引いた。

 先ほどまでの様子と打って変わり、ラドクリフ侯爵は余裕の表情で頬杖をついた。


「紹介しよう。このローブを着た彼らは、わたしの使用人の中でも、事件の偽装や荒事に特化した者たちだ。それで、衛兵たちは使い物にならないようだけど、どうするシエラ嬢?」

「っ……!く、薬って、彼らは無事ですか?」

「ああ、まだ殺さないよ。殺すのは、『何故か屈強な衛兵五人が巻き込まれた事故現場』の偽装をする準備ができてからだからな。薬についても心配することはない。ほんの一日ほど気を失って目を覚まさない程度のもので……」



 彼は言いながら、優雅な手つきでシエラが飲んでいた紅茶の入ったカップを持ち上げた。



「貴女の紅茶に混ぜたものとは少し違う種類の薬さ」

「え……」



 突如、ぐらりと景色が歪むような感じがした。

 ラドクリフ侯爵の勝ち誇った笑みを視界の端に捉えたのを最後に、シエラは意識を失った。