「ラドクリフ侯爵にずいぶんと気に入られたようだな。まあお前はこんなに美しいんだから当たり前かもしれないが」

「あ、あはは……」

「侯爵は人格者だと聞くし、家柄も血筋もしっかりしている。……まあ、過去に女性の影は多少あるが、許容範囲だろう。これだけ熱心に贈り物や手紙を贈って、シエラに夢中なのは間違いないようだしな」

「あの、お父様、私やっぱり結婚は……」



 シエラは上機嫌な父に恐る恐る言う。

 しかし父も、娘の言おうとしていることをすぐに察したらしい。にこにこと感じの良い笑みを消し、静かに首を振った。



「……シエラ。わたしだって、ずっとお前をこの家に残して、守り続けてやることができたらどんなに良いかと思うよ。だがな、わたしも若くない。ラドクリフ侯爵からの話は、断りにくかったというのももちろんあるが、わたし自身もお前にちゃんと結婚のことを考えて欲しいと思って勧めたんだ」

「……」

「うちと同等以上の身分なら、今後お前が苦労することはない。わたしの目から見て、ラドクリフ侯爵は理想だ」