真相がわかったところで、シエラは使用人に小言を言われつつようやく帰路についた。


 シエラは、静奈としての記憶を取り戻した数時間で、あることを悟っていた。


 この国の衛兵(警察)は無能すぎる。


 静奈の生きた時代の日本と違い、科学が発展していないのだから捜査に限界があるのはわかる。だがそれにしたって、容疑者がいて動機さえあればすぐさま犯人だと決めつけるのはいただけない。

 恐らくこれは今に始まったことではない。これまでたくさんの冤罪を生んできただろうし、これからも生まれるだろう。迷宮入りした事件だって多いはずだ。

 そんな世界で、シエラは黒瀬という頭の切れる探偵の助手を務めていた記憶を取り戻した。

 もしかしたら、前世の知識を使って一つでも多くの事件の真相を明らかにしろという、天からのお告げなのではなかろうか。



 ──その日からシエラは、事件があったという噂を聞きつけてはその現場に赴き、前世で黒瀬から学んだ知識や推理法を参考にその真相を解き明かすということを繰り返した。