警部は黒瀬に会ったら言うつもりだった小言がいくつもあったようだった。だが、複数の点滴に繋がれ、ただでさえ不健康そうだった顔色がさらに悪くなった黒瀬を見てそれらを飲み込んだ。
「黒瀬……あんた、そんなに良くないのか?」
「ええまあ。治療法の確立していない病でしてね。もう何年も前に医者に匙を投げられているのですよ」
「そう、だったのか」
松坂警部は言うべき言葉が見つからないようで、しばらく目を泳がせていた。
それでも、黒瀬の病がすぐにでも死に至るようなものとは考えていなかったらしい。
「まああれだ……。しばらく身体を休めて、それで回復したらまた協力してくれ。……そうしたら、天国の静奈さんも安心するだろう」
心から黒瀬を慮っての言葉だというのは強く伝わってきた。
普段、黒瀬に力を借りることには抵抗があるようで邪険な態度をとる松坂警部だが、黒瀬がいかに謎を好み生きがいにしているかをよく理解していた。不器用なりに黒瀬を元気づけようとしているのだ。



