何よりも静奈の安全が優先事項。
それに黒瀬は、静奈と出会ったことで人を恋い慕う気持ちを知り、復讐をしたいという酒田の気持ちを理解できるようになってしまった。
どうせ残された時間などほとんどない命。それで全てが丸く収まるというなら、くれてやろうと思った。
ドアに手を掛けると、鍵がかかっていなかった。
部屋の中は薄暗く、異様な雰囲気だ。
恐らく静奈がとらわれているのは二階だろう。そう直感してミシミシと音のする階段を上る。
「……久しぶりだな」
一番奥の部屋からわずかに物音が聞こえ、勢いよく扉を開けると、部屋の真ん中で仁王立ちする酒田がいた。
その傍らに転がったいたのが、タオルを噛まされ手足を縛られた静奈。彼女は黒瀬の姿を認めると、声にならない声で「来るな」と訴えてきた。
「ええ、お久しぶりですねぇ酒田さん。お変わりないようで」
「はっ、お変わりないわけあるかよ」
「約束です。静奈くんを解放してください」
酒田はにたりと口元に笑みを浮かべた。
とうとう願いが成就する。そんな恍惚とした顔色だった。
「いや?約束は貴様の命と引き換えだったはずだ」



