『今から指定の場所に来い。来ないと言うなら今すぐに御園静奈を殺す。来て、オレの目の前で貴様が死んで罪を償えば、この女は解放してやる』
「わかりました」
黒瀬は寸分の迷いもなく答えた。
指定された場所は、かつて酒田の恋人が首を吊って自殺した家。現在は空き家になっているはずだった。
「酒田さん。静奈くんが無事である証拠が欲しいです。声を聞かせてください」
『良いだろう』
小さく何かをほどくような音がした。恐らく今まで静奈の口が塞がれていたのだろう。
やがて、苦しそうに大きく息を吸い込むのが聞こえた。
『黒瀬さん!来ちゃだめです!』
電話の向こうから聞こえたのは、音割れするほどの叫び声。
『この人、本気です。本気で黒瀬さんのこと殺すつもりです』
「良かった。確かに無事そうですね。今からそちらに行くので大人しくしていてください。間違っても彼を刺激するような態度はとらないように」
『黒瀬さん!聞いて!私はたぶん大丈夫です。この人は仮に黒瀬さんが来なかったとして私を殺す気なんてありません。あくまで狙いは黒瀬さんです』



