元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 黒瀬は受け答えを続けながらも、男の話し方の癖などを過去に関わった人物と照らし合わせていく。

 黒瀬は一度頭に入れたことを基本的に忘れない。それは人の顔や名前、声などに関しても同様だ。



「それで酒田(さかた)圭司(けいじ)さん。結局何のつもりで静奈くんを誘拐したんです?」

『……ふん。電話越しの声だけでよくオレだとわかったな』

「候補はあと数人いましたが当たりだったようですね。あの事件からもう三年が経ちますか」

『黙れ!貴様があのとき余計なことをしなければ、彼女は今も俺の隣にいたんだ!自殺なんて……!』



 とある中年男性が殺された事件。犯人は殺された男の部下である女性だった。

 女性は日頃から会社で男性に様々なハラスメントを受けており、ある時無理やり体の関係を迫られた。女性は無我夢中で抵抗するうちに男性を殺してしまい、慌てて証拠を隠滅した。

 彼女の証拠隠滅は巧妙で、警察の捜査は難航し迷宮入りしかけていた。