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その電話がかかってきたのは、よく晴れた土曜日の昼頃だった。
その日は静奈が朝から買い物に行くと言って出掛けていた間に病院へ行っていた。そして帰って来たのとほぼ同時に、固定電話がけたたましく鳴り響いた。
受話器を取れば、こちらが名乗る隙も与えず、くぐもった男の声が聞こえてきた。
『黒瀬蒼也だな』
「……ええ」
『お前の女は預かった』
何となく嫌な予感はしていた。
黒瀬は一瞬息を止め、静かに吐き出す。
取り乱したら向こうの思うつぼ。冷静な声色を作って尋ねた。
「彼女は無事ですか?」
『無事だよ。……今はな』
「連絡してきた目的は身代金……というわけではないでしょうね。わざわざ目立つ昼間に、それも成人女性を誘拐するなど、元々静奈くんのことを知っていて狙ったとしか考えられません。となれば俺がさして裕福でないことも探偵を生業としていることも承知の上でしょう」
『ふん、ずいぶん余裕があるようだな』
「焦れば静奈くんを返してくれるというなら、いくらでも焦りますが」
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その電話がかかってきたのは、よく晴れた土曜日の昼頃だった。
その日は静奈が朝から買い物に行くと言って出掛けていた間に病院へ行っていた。そして帰って来たのとほぼ同時に、固定電話がけたたましく鳴り響いた。
受話器を取れば、こちらが名乗る隙も与えず、くぐもった男の声が聞こえてきた。
『黒瀬蒼也だな』
「……ええ」
『お前の女は預かった』
何となく嫌な予感はしていた。
黒瀬は一瞬息を止め、静かに吐き出す。
取り乱したら向こうの思うつぼ。冷静な声色を作って尋ねた。
「彼女は無事ですか?」
『無事だよ。……今はな』
「連絡してきた目的は身代金……というわけではないでしょうね。わざわざ目立つ昼間に、それも成人女性を誘拐するなど、元々静奈くんのことを知っていて狙ったとしか考えられません。となれば俺がさして裕福でないことも探偵を生業としていることも承知の上でしょう」
『ふん、ずいぶん余裕があるようだな』
「焦れば静奈くんを返してくれるというなら、いくらでも焦りますが」



