前世で黒瀬と遭遇したことがあるのは、逆のパターンだった。自殺に見せかけて殺されたのを、黒瀬は首にできた傷を証拠に見抜いたのだ。
まさか黒瀬から学んだ知識が、生まれ変わってからも役に立つことになろうとは。
「は……」
やはり衛兵たちはその事実に気付いていなかったらしく、驚いたように目を見開いてシエラを見た。
「だ、だがこの男は店内で挙動不審で……」
「自殺した店員の遺体を見たからでは?」
「だがそれならおれを見て逃げる必要はないだろう!こんなナイフを持ち歩いているのもおかしい!第一こいつは『自分は殺していない』と言うばかりで、そんな説明一度もしていない」
「……そうですね、これは私の想像なのですが」
シエラは男を一瞥してから、先ほど拾い上げたナイフといまだ床に転がっている鞄に視線を向けた。
「彼が宝石を盗みに入ったのは事実なのでは?もちろん人殺しをするなんてつもりはなく、このナイフで脅して盗むつもりだったのでしょう。遺体を発見した状況を説明するには、自ずと盗みに入ろうとしたことも話さざるを得なくなるため、できなかった」



