残りの命の長さが定まり、自分の生きた意味を刻み込むために始めた探偵。
探偵業を始めてから、白黒だった世界に色が付いたような気がしていた。
だが、静奈と日々を過ごすうち、色が付いたと思っていた世界は、所詮二色が三色になった程度だったのだと気づかされた。
静奈の存在が、本当の意味で黒瀬の世界に色を付けた。
……そんな日々の中で、黒瀬は静奈に対してある感情を抱いていることに自覚した。
それは、あまりに多くの人に言葉にされ続け、安っぽさすら覚えるような名前の感情だ。
恋。静奈に、恋心を抱いている。
気が付いた瞬間には、思わず笑いが込み上げてきた。
黒瀬とて人間である以上、人並の性欲は持ち合わせている。それに加えてかなり整った容姿をしているので、ある程度の女性経験はあった。そしてそれに伴って愛の言葉らしきものを囁いたことだって一度や二度ではない。
だが、それらはあくまで口先だけだった。
自分がここまで純粋に人を愛することができるというのは知らなかった。



