静奈は、“御園”という苗字で呼ばれることを嫌がった。どうしても殺人犯である両親との繋がりを感じてしまうのだそうだ。
しかし黒瀬が「静奈さん」と名前で呼べば、何故か彼女はそれにも不満そうな顔をした。
「なんかよく推理小説で見るような探偵って、助手のことくん付けで呼んでるじゃないですか。私それちょっと期待してたんですけど」
そんな要望に最初は戸惑ったが、言われた通りに呼んでみれば、彼女は非常に満足そうな顔をした。それに何だかんだで黒瀬もその呼び方にしっくりきた。
黒瀬の元で働き始めた静奈だが、最初はさすがに有能とは言い難かった。
聞き込みをするにしても満足な情報は引き出せないし、試しに意見を聞いてみれば、幽霊だのポルターガイストだのと言いだす。
そういうところもひっくるめて、彼女と過ごす時間は退屈しなかった。



